この場に居る全員が息を飲む程のひと吠えに

騒いでいた爬虫類親子が静かになり

視線を集めた永遠に向かって
重い空気を破ったのは父だった


「あの、何故此処に木村の若が」


そう言った途端そっくりな顔を上げた爬虫類親子


「「「え」」」


同じ表情で驚いた後でその顔を急に青ざめさせた


「誰に断って俺の女を連れ出した」


低く唸るような永遠の声に


「え」


父の目が宙を彷徨う


「千色は俺の女だ、それを
こんなクソと結婚させようとするとは
森谷、覚悟決めてのことだろうな」


初めて聞かされる父からすれば
理不尽な永遠の物言いなのに

ひと言も言い返せないのは
この世界の掟

ガタガタ震え始めた父に向けて


「まだ言ってなかったな」


助け船を出すところを見ると
永遠は理不尽な馬鹿ではないらしい


少しホッとして永遠を見上げると
永遠は胸ポケットの中から紙を取り出した

それを私とは反対側に向けて
差し出すと


「・・・っ」


いつの間に来たのか
斜め後ろに控えていた大吾が
それを受け取った


「通達!」


いつぞや見た風景に全員の背筋が伸びる


「一つ!
森谷千色の許婚を解く
二つ!
森谷千色を木村永遠の婚約者とする
三つ!
二つに反対する者は取り潰しの上破門とする
四つ!
麻生大吾を木村組預かりとする
以上」


大きな声で読み上げた大吾は
最後にその紙を広げてこちらへ向けた


「「「「「っ」」」」」


一瞬で息を飲む一行が見つけたもの



通達の最後の欄に




白夜会三ノ組木村組 木村永劫




三ノ組の組長の名前があった