「あの・・・」


「・・・っ」


可愛い声が聞こえて振り返ると


・・・あ


いつかマンションのエントランスで見かけた女の子が立っていた


「琴、こっちだ」


「あの、先生?優羽の鞄持ってきました」


「あ、ありがとう、内田さんね
これから橘病院に連れて行くことになったの」


「そんなに酷いんですか?」


「熱が高くてね」


「そうですか」


眉尻を下げた顔も可愛い女の子は
ぺこりと頭を下げるとベッド横まで静かに移動した


「熱、ほんとに高そうだね」


顔を見るなりそう呟いた堂本さんに


「38.8°だった」

堂本君は自分のことのように
辛そうな顔を向けた


「そっかぁ」


「琴、一人で来たのか?」


「ううん、大和が外で待ってるよ」


「そうか、もう星悟も着くから
琴は教室に帰れ、優羽には俺が付き添うから心配ない」


「・・・ん、じゃあ、任せた」


「あぁ」


「鞄、ここに置くね」


ベッドの足元へと鞄を置いて


「優羽、お大事に」


小さく声を掛けると


「先生、ありがとうございました」


フワリと微笑んで保健室を出て行った


クーーーーーーーーーッッ


なんて可愛いのーーーーーーーっ

内田さんとは違うタイプだけど
サラサラの黒髪は天使の輪が二本もあって
透き通るような白い肌に大きな瞳
可愛らしい口元はリップクリームも塗っていないのに桜桃のようにプルンとしていた


「・・・オイッ、先生っ」


「は、はいっ」


「車、来たから」


ウッカリ脳内お喋りを続ける私の目の前に

呆れた顔をした堂本君が立っていた