胸元の名札は【内田】
・・・二年生ね


「内田さ〜ん、体温計りますね?
ちょっと触りますよ?」


声を掛けると
少し目を開けて小さく頷いた

・・・可愛い


高い位置で二つに結ばれたツインテール
小さな顔に配置されたパーツは
どれも魅力的で可愛い

それに加えて染まる頬に潤んだ目

この恐ろしい男子生徒の彼女だろうか

お姫様抱っこで連れ込まれた内田さんの
胸元のリボンを外すと
体温計を差し込んだ

オデコに触れると

「熱っ」

尋常じゃない熱さに
冷えピタを貼り付けると

隅に置いてある冷蔵庫へと走った

冷凍室に入れてあるアイスノンを取り出しタオルを巻き付けると内田さんの枕の下に入れる

ピピピ


「外すね」


返事も出来ない内田さんから体温計を抜き取る

38.8°

「高いわね」

熱が高くても大丈夫な子と
内田さんのように目も開けられない程弱る子がいる
病院に連れて行くか帰らせるかの判断はここだと思う


小さな体温計を覗き込む私に


「今朝はいつも通りだったんだ
お昼頃から徐々におかしくなって」


近くで聞こえた声に顔を上げると
不安そうな目がこちらを見ていた

「そうなのね・・・君は?」

胸元をチラッと見たけれど
名札が付いていなくて尋ねると


「堂本亜樹」


ヒーーーーーーーーーッ
出ましたっ
関わってはいけない一位


「堂本君、ありがとう
この・・・」


「内田、内田優羽、二年六組」


「あ、ありがとう」


食い気味に答えてくれるあたり
内田さんは堂本君の彼女なんだろね


「後はこちらで引き受けるから
堂本君は教室に戻って良いよ?」


「あ゛?」


「・・・っ」


射抜くような双眸を目の当たりにしてマニュアル通りに声を掛けたことを後悔した