「あーのぉ・・・」


「ん?」


「ありがとーござ、ましたぁ」


「あ、あぁ」


ちょうど胸の辺りにある女の頭に顎を乗せる


・・・この匂いだ


抱き留める身体から上がる
甘い匂いに

顎を乗せた頭の天辺に唇を付けた


腕の中の身体がビクッと反応する


「あ、あのぉ・・・」


「ん?」


「はらしてぇ」


「クッ、嫌だね」


「ろ〜してーぇ」


「やっと捕まえたんだ
そう簡単には離さねぇよ」


「ふぇ?」


どれだけ飲んだのか
呂律の回らない女を

そのまま抱き上げた



「「「「キャーーーー」」」」



途端に上がるウザい女達を睨みつけると


「永遠っ」


追いついてきた大和が前に回り込んだ


「へぇ〜」


女の顔を覗き込むと
「へぇ」と笑う大和に


「とりあえず連れて帰る」


一刻も早くこの場所から離れたくてそう言うと


「え?このまま誘拐?」


鳩豆の顔になった


「誘拐じゃねぇ」


「いや、誘拐だぞ?永遠よ〜」


「良いから車止めろよ」


「知〜らないっと」


ヘラリと笑うと車道に向かってタクシーを止めた大和は当然の様に先に乗り込んだ


「大和・・・邪魔だ」


俺の声にも降りる気配を見せず


「え〜、こんなレア体験
みすみす見逃すはずないじゃん」


満面の笑みを向けた


「おろし、れ〜」


「ブッ」


膝の上で横抱きにした女は
暴れる訳でもなく大人しく俺の腕の中に居る


偶に“降ろして”とか言うけど
酔っ払って眠い方が勝っているようだ


「家に連れて帰るのか?」


「あぁ」


「マジ?そりゃ〜楽しみ」


ずっと笑ってタブレットを操作する大和を無視して


腕の中の女の潤んだ瞳が
今にも閉じそうになっているのを
ずっと見ていた