「私は凱と結婚したいな〜」


最早口癖になりつつある告白も
言いすぎて信憑性が無くなりつつある

でも、10年間飽きずに懲りずに

態々口にするのは凱が
それにどう反応するか知りたいだけ



「・・・ちぃ」



案の定、凱は眉尻を下げて
困った顔になった

私が小学六年の歳に森谷組に入った凱は

私が懐いたことで
それ以来ずっと私のお世話担当をしている

“ちぃ”という呼び方は
小学生の頃の名残で

今は困った時や怒った時
感情が動いた時に出ることが多い


「私はずっと凱が好きなのに」


「自分はちぃをお護りする担当
ちゃんと分は弁えてる」


「じゃあ凱は私がキモブタ変態野郎に
いいようにされても平気なのねっ」


「そうじゃねぇ」


ハァとため息を吐くと
眉根を寄せた


「ちぃには生まれながらに許婚がいる
土岐組の坊はキモブタでも変態野郎でもねぇぞ?
俺は近くに居るから好きな気がするだけで
それは家族と同じ愛情ってことだ」


「土岐組の坊なんか貰わなくても
私が凱と結婚して凱が森谷組を大きくすれば問題ないじゃん」


「問題アリアリだ
昔からの約束を反故にするってことは
ただで済む話じゃない」


「お金がいるの?」


「あ゛ーっっ、そうじゃねぇ
抗争になるかもしれねぇってことだ」


「抗争?なら平気じゃん
土岐組なんて小さい組簡単に捻り潰してやればいいのよ」


「ちぃ!!大変なことを
簡単に口にするんじゃねぇ!!」


ドスの効いた低い声に
驚いて肩が跳ねた