「ちぃ、見過ぎだったぞ」


エレベーターの扉が閉まった瞬間
凱が怖い顔をした


「あ〜、だって気になったんだもん」


「プライベートじゃなければ
キチンと挨拶をしたかったが・・・」


凱は緊張したままなのか
一ノ組の若頭へ挨拶しなかったことを
部屋に入ってからも延々思い返しては頭を抱えていた


「んで、あの高校生は・・・」


教えられたデータを思い返していると


「あれは去年一ノ組の親父さんが再婚した
姐さんの連れ子で“堂本琴”さん
若頭の婚約者だ」


「あ〜そうだった、義兄妹だけど
卒業したら結婚するんだったよね?」


「あぁ」


「モデルかと思った」


「あぁ、確か姐さんも凄げぇ美人って噂」


「へぇ」


「俺、若頭に会ったの初めて」


「え?そうなの?」


「あぁ、2年前に遠目で見かけたことはあったけど」


「ま、今日だって会ったって言っても
“見かけた”と同じじゃない?」


「・・・そうだな」


「凄い威圧感だったよね」


「側近の上原透さんも」



一ノ組の若頭に会った衝撃に
凱と二人、暫くは放心状態で
ソファに座ったまま動けなかった







「作るか」


漸く動き出せたのは
30分も経ってからで



キッチンに並んで立ちながら


「失礼があっちゃなんねぇ」


凱はやっぱり同じことを繰り返し口にしていた