入学式から毎日
A5サイズのノートを片手に
東白学園全体図から保健室の小さな引き出しに至るまで

小崎先生に案内されるままを
書き連ねていく


時に保健室へやってくる生徒の応対をしながら

気がつけばGWが始まろうとしていた


「では、丸山先生連休明けまで
お元気にいてくださいね〜」


毎度毎度語尾を伸ばす小崎先生に
一ヶ月余りでスッカリ慣れ

軽く遇らえるようにまでなっていた


「小崎先生も是非、品行方正で
お願いしますね」


冷たく言い放つと
オデコに手を当てながら大袈裟に
ため息をついた小崎先生が見えた


私学ならではの穴埋めで
GWは10連休

今夜は凱と二人で過ごして
明日からは森谷の家に戻ることにしている


毎日仕事から帰る私を迎えに来て
一緒にスーパーで買い物をしては
自転車で並走する凱


たったそれだけなのに
私の中は凱との疑似恋愛と新婚生活を楽しんでいる気分

職員用の自転車置き場で
赤い愛車に跨がると

凱の待つコンビニまで
勢いよくペダルを漕いだ


東白学園から自転車で1分のコンビニは
いつも学生で溢れている

大っぴらに「お待たせ〜」なんて言えないから

店の前だけ減速する

私が来ることを予測しているかのように
自然に自転車を漕ぎ始める凱は
いつものように後ろにピタリと張り付いた


「お帰り」


「ただいま」


「スーパーな」


「うん」


イケナイことをしている風に
お互い前を向いたまま声だけを掛け合うのも

ドキドキして嬉しい

それを楽しみながら
スーパーへとペダルを漕いだ