「・・・っ」



視線が合った瞬間全身が痺れたような感覚に陥った


視線を合わせているのに
どこか彷徨うような瞳の動きに


ちゃんとこちらを見ろと欲が渦巻く


良い感じに酔っているのだろう


頬は薄らピンク色に染められ
黒目の大きな瞳は潤んでいる

少し半開きの小ぶりな唇は吸い付きたくなるような赤

綺麗な黒髪はゆるく巻かれていて
全体的に柔らかな印象で可愛らしい


・・・欲しい


頭の中はただそれだけだった


「な〜に見つめ合っちゃってんの?」


動けない俺の背後から大和の緩い声が煽る


「・・・るせぇ」


姉貴が二人も居る所為で
煩い女が苦手な俺を熟知している大和は
この状況が面白いのだろう


「ねぇねぇ彼女名前は?」


大和の煽る理由が俺の態度だとわかるのに
女を閉じ込めた腕の力を緩めることが出来ない


そんな俺に向けて


「いや・・・あの・・・」


もう一度女が俺を見上げてきた


・・・欲しい


頭の中に響いた自分の声に突き動かされるように首を傾けると


頭ひとつ分低い女の唇を塞いだ


「・・・んっ」


ただ合わせただけのキスを
離すと同時に腕の力が抜けた



「・・・永遠、やるじゃん」


揶揄う大和の声を背中に受けながら
女から視線を離さずいると



「・・・・・・バカっ」



そう言って顔を歪ませ
涙を潤ませながら個室を飛び出して行った