「ん・・・んっ」



巧な口付けに合わせるのが精一杯で
夢中になってそれに酔う



耳から入る水音に
身体の奥に熱が灯り始めた


未だ慣れない深い口付けに

酸素を取り込もうと逃げる舌は


いとも簡単に絡め取られてしまう



条件反射のように頭を下げようと動けば


行く手を阻むように添えられた
大きな手が頭の逃げ道を塞ぐ


「・・・んっ・・・・・・ん」


頭がボウとするくらい翻弄し続ける口付けが


最後は啄むように数を重ね
短いリップ音を立てて離れた時には


「・・・っ」


腕の中に抱かれていたはずなのに

視界に広がるのは

白い天井と男の瞳をした永遠だった


「千色」


「・・・ん?」


「今なら選ばせてやる
このまま俺に抱かれるか一人で寝るか」


・・・・・・狡い


やっと二人きりになれたのに
一人で寝るなんて・・・言いたくない


でも・・・


・・・やっぱり・・・怖い


・・・・・・ゔぅ


答えなんて・・・出せない



「クッ、百面相してる」


「・・・?」


「嘘だ、悪りぃ、ちょっと意地悪しただけだ」


「え?」


「千色のことは大事に思ってる
だから・・・勢いに任せてなんて
考えちゃいねぇ」


そう言った永遠の瞳はいつもの優しいものに戻っていて

大切に想われていることが伝わってくる


「ありがとう」


嬉しくて鼻の奥がツンとした


「あぁ」


そう言って少し口角を上げた永遠は
頬にチュッとリップ音を立てた後で





「・・・・・・だがな、千色
今のうちに覚悟は決めとけよ
次は泣いてもやめてやれねぇからな」



背中がゾクリとするほど色気を孕んだ瞳で微笑んだ

それは


獲物を捕獲しようとする野獣のように
キラリと光っている



頭の中で鳴る危険信号



視線を逸らしたいのに



抗えないまま囚われる




その瞳に射抜かれ





逃げ切れないと白旗をあげた






それだけならまだしも・・・



自分から



渦中へ飛び込むの



獰猛な鋭い瞳に囚われたまま




囁くのは












「永遠、愛してる」











捕食の引き金







fin