「川島さんのお願い叶えてあげますか?」


司会の先生がマイクを永遠に向ける


あれだけ騒がしかった会場は
永遠の返事を聞き逃すまいと静まり返っていて

全員の視線を集めていた


・・・断って


何度も何度も繰り返す私の唇は

聞こえた永遠の声に諦めたように動かなくなった



「・・・あぁ」



その瞬間、湧き上がる歓声

寒くもないのに身体は小刻みに震えてきて

その喧騒から逃れるように会場を抜け出した


こみ上げてくる感情は口を開けば崩壊しそうで
下唇を噛んで堪える

制御できない涙で視界が歪んで
ふらふらする足元の邪魔をする

バタンと部屋の扉が閉まった瞬間
踏ん張っていた足が崩れ落ちた


「・・・・・・んっ・・・
・・・ん・・・っ・・・と・・・わ」


喉の奥から迫り上がってくる嗚咽が
抗えないように溢れだす


『あぁ』


お願いを叶えた永遠の低い声が
頭の中に木霊する


・・・なんで?


あくまでも“お願い”なんだから
聞かなくても良いじゃない


我慢していた我儘が
堰を切ったように溢れてくる


二人きりで過ごしたのはいつだったか
忘れてしまうくらいなのに

あの子と永遠は二人きりで過ごして
告白までされてしまう

『千色だけだ』と言いながら
本当は若い子の方が良かったと後悔しているのかも

卑屈になった思考は負のループに嵌まり込み

永遠の気持ちをも疑う

あの場限りだったよって
今すぐ此処へ来て抱きしめてよ

そしたら・・・許す・・・から



子供みたいに泣きじゃくり


いつしか・・・


・・・・・・諦めた





ボンヤリした頭のまま
立ち上がってバスルームへ入ると
頭から熱いシャワーを浴びた

落ちた気持ちごと
全部流れて仕舞えば良い


永遠を信じきれない
弱い自分だから

こんなにも不安定で脆い


長く泣いた所為で
鈍痛のする頭を動かさないように
バスローブを身につけた





その瞬間



聞こえたチャイムに肩が跳ねた