「それでは!恒例のビンゴ大会〜」



ホテルのパーティールームを貸し切った催し物に

生徒も先生達も盛り上がっていた


会場入りする際に渡されたビンゴカードはバッグの中へ入れたまま


生徒の付き添いで医務室へ行くと
理事長へ言付けをお願いすると

盛り上がる会場を出た


「先生、ごめんね」


青白い顔をした荒木君は申し訳なさそうに歩いている


「ううん、大丈夫よ
荒木君こそビンゴ大会参加出来なくて残念だね」


ホテルから教わった医務室に着くと
言われた通りに誰も居なかった


「とりあえず横になって体温計りましょう」


「はい」


東白にしては真面目なタイプの荒木君は
成績上位者が受けられる授業料免除制度対象らしい


ピピ
電子音が聞こえ体温計を見れば
37.2度と微熱だった


頭痛が酷いと言うから
予め聞いていた薬箱から鎮痛剤を取り出して
ウォーターサーバーの水を渡した


「今夜はこのまま部屋に戻る?」


頭痛が酷いなら会場へ行く気にはならないだろう


「そうします」


「じゃあ、部屋まで付き添うね」


たまたま一人部屋らしい荒木君を部屋まで送り届けた


このまま会場へ戻ろうと思ったけど
あの大歓声の中に入って行くのも気が引けて

一度部屋に戻って日誌を仕上げてからにしようとエレベーターを途中で降りた


理事長の隣、オーシャンビューの部屋は
一人で使うには広くて少し寂しい

大きな鏡のついたデスクに座り
今日一日を思い出しながら書き込む


30分ほどで仕上がり腕時計を見れば
荒木君を連れて会場を出てから
小一時間程度経過していた


「さて」


手にしたバッグの中に入れたままの
ビンゴカードを思い浮かべながら会場へと足を向けた