「丸山先生、虫に刺されたみたい」



囲みメイクが涙で流れてしまった
ちょっとホラー気味の女の子が
赤く腫れた腕を持ち上げて見せてくれる


「どんな虫だったか覚えてる?」


「んんん・・・蚊?」


悩んだ割に“蚊”かよ・・・なんてことは言わない


「痒いじゃなくて、痛いの?」


涙が出るくらいだから“痛い”のかもしれない


「痒いんだけど爪でバッテンしてたら
痛くなっちゃったぁぁぁ」


キラキラネイルの爪を見せながら
ホラーメイクが怖さを増す

いや、ここで泣くな
自分の所為じゃん


「傷付いてたら薬が滲みるかも」


ちょっと脅せば


「あ、シール持ってるからヘーキ」


言いながら後退りした


「ふふ、じゃあそれ貼って」


「は〜い
てか、丸山先生ってチョー地味じゃね?」


「ん?」


「今夜のビンゴ大会って先生も参加なのに
こんなに地味じゃ一抜けでもねぇ」


「・・・?」


ビンゴ?一抜け?
なんとも謎かけのような彼女の言葉に
首を傾げたまま動けない


そんな私に


「毎年沖縄班の最後の夜のパーティーで
ビンゴ大会があるんだけど〜
そこで一抜けの賞品が凄いの
その為に、アタシ沖縄班に申し込んだんだから〜」


「凄いの?」


「そう!なんと〜一抜けの人は
なんでも一つお願いが叶うの
お願いされた人は叶えてあげなきゃなんないの」


「は?お願いなのに人なの?」


「そりゃそーでしょ
お願いと言う名の公開告白なんだもん」


「・・・は?」


「相手の気持ちは関係ないの?」


「ま、その夜限りだからね」


「あ〜、そういうことか」


「だからね毎年沖縄希望者は多いの
今年も抽選だったしね」


「へぇ、そうなんだ」


「ビンゴが始まって10年連続
男子が一抜けらしいの
今年は絶対私が当ててやるんだから〜
丸山先生なら誰にする?」


「え?私・・・ん・・・」


その夜限りでも・・・私は永遠を選びたい

でも・・・それはきっと叶わない


「考えとかなきゃ、ビンゴ始まったら
興奮状態で飛んじゃうんだから〜」


まるで一位を勝ち取ったかのように
瞳をキラキラさせて妄想を始める彼女


「さ、そろそろ戻りなさい」


「あ、は〜い」









この時の彼女から聞いた“お願い”を
もう少し詳しく聞いておけば
あんなに泣かずに済んだのかな