・・・怖い


・・・半端ない



あまりの迫力に一瞬呼吸を忘れた



車に乗ったまま二つの門を潜った先の車寄せ


先に着いていたお義父さんと笙子さん
そして、永遠の手に掴まって車から降りた先に見えた迫力ある建物と


深い色合いのスーツを纏った組員さん達


一分の隙もないその動きに
圧倒された


永遠に手を引かれて歩く石畳は
まるで雲の上を歩いているような不思議な感覚で

どこか夢の中にいる感覚にも似ている


サッと両開きの戸が開け放たれ
フワリと木の香りに包まれる


「中へ」


そう言って戸の両脇で頭を下げる組員さんの間を
真っ直ぐ入って行くお義父さん


その後に続く笙子さんはいつも通り前を見据えて背筋を伸ばしている


「行くぞ」


間近で聞こえた声に弾かれるように見上げると


フゥと肩の力を抜く程の優しい笑顔の永遠が見えた


ひとつ頷いてみせれば
繋いだ手に一瞬力が入り
その手に引かれ中へと足を進めた



「木村の頭、お待ちしておりました」



そう言って頭を下げたのは縁なしの眼鏡をかけたインテリ風の男性


「あぁ、緒方」

緒方さんと言うらしい


「どうぞこちらへ」


もう一度頭を下げると先導するように広い廊下の中央を歩き始めた

その後に続くのは後藤さん

お義父さんと笙子さん

そして
手を繋いだままの私と永遠


最後に大吾、と大行列になった


長い廊下を二度曲がり
一行の足が止まったのは
鮮やかな襖絵が続く一角だった


その襖の前で

「親父、木村の頭が到着されました」


緒方さんは声を上げると一度振り返り頭を下げる


「入れ」


中から低い声が聞こえると同時に


緒方さんと後藤さんが襖をサッと開いた


「・・・っ」


一瞬呼吸を忘れる程ピンと張り詰めた場の雰囲気に

足に錘が付いたように動かない

手を繋いだままの永遠は
固まる私に気づくと手を離した


「大丈夫だ、千色」


離れた手は私の背中に添えられて
落ち着かせるようにトントンとリズムを刻む

フゥと吐き出せた息によって
錘を感じなくなった足は

ゆっくりと敷居を跨いだ