「・・・っ」


黙ってしまった母を見て
此処まで何の準備もないまま来たことが伺えた


それにしても・・・確か
後藤さんは『三ノ組の仕事から手を引いて』と言った
・・・てことは


頭の中に浮かび上がったそれに
隣に座る永遠を見た


私の気持ちが通じたみたいに
こちらを向いて少し微笑んだ永遠は


「大吾、通達の三つ目」


低い声を出した


「承知」


そう言って後藤さんの元へと移動した大吾は用意していたのか内ポケットから通達を取り出した

それを後藤さんへ手渡すと大きく広げた


「三つ!
二つに反対する者は取り潰しの上破門とする」


静かな後藤さんの声に
向かいに座る四人が再度息を飲んだ


「猶予は与えねぇ
今日、この場で森谷の取り潰しと破門を言い渡す」


被せるように追い込んだお義父さんの声が広い部屋に響いた

このシンとした空気を壊したのは
読めない表情を続ける千紗だった


「・・・・・・・・・なによ!」


「・・・っ」


生まれて初めて千紗の大きな声を聞いて驚く

普段ならこんな声を出すだけで
咳き込んでいたはずなのに・・・


・・・いや・・・仮病?


あれは嘘だったの?
混乱して千紗を見つめる私に向かって


「だから千色なんて嫌いなのよっ」


次に聞こえた千紗の声には
負の感情しか込められていなくて


「千紗、やめないか」

「そうよ、千紗」


焦った両親が宥めるように千紗へ声をかけるけれど


「あんたなんか死ねば良いっ」


サッと立ち上がった千紗は
髪留めを抜くと
尖った方をこちらへ向けた



「・・・!」


「「「千紗!」」」

「取り押さえろっ」