喉を鳴らして笑う組長へ
森谷の四人は探るような視線を向ける

こちらから見れば、それはとても滑稽で

その中でただ一人・・・
森谷側の後方で控える父の側近の東山さんだけが拳を握りしめ、下唇を強く噛んでいた


「なぁ森谷、黙ったままだが
その口は飾りか?」


お義父さんの低くて通る声が
シンとした部屋に響く


「・・・」


何も言えないまま、尋常じゃない汗が額を滑り落ち
それを拭うこともしない父へ



「親への報告を疎かにした上
通達を反故にする発言
顔合わせに来た割に長である組長を差し置いて
姐が意見するとは言語道断」


ゆっくりとした口調だけれど
後藤さんの声から怒りが読み取れた


「仮病で後も継げないような娘が可愛くて仕方ないようですので
森谷には三ノ組の仕事から手を引き
自然の多い土地で療養でもしてもらいましょう」


そのまま声色を変えて更に続けられた言葉に
四人の動きが止まる

父が口を開こうと背筋を伸ばしたところで


「ちょ、待って、待って下さい
森谷は何十年も三ノ組に仕えて来た古参です
北の繁華街の半分をシマとして頂いて
三ノ組の為に付き従ってきたんです」


母がしゃしゃり出た
結局、自分達のことしか考えていない無神経さに

可哀想だとさえ思ってしまった

それに合わせるように
ハァと大きく息を吐き出した後藤さんは


「だから?」


心底呆れた声を出した


「だから・・・あの・・・えっと」


言葉を探す母に


「若頭と若姐さんの付き合いを知らなかった
長女が小さい頃から身体が弱かったから後継ぎは考えてない
それ以外で言いたいことがあれば
どうぞ、続けてください」


後藤さんは二本指を折ってから母を見た