「じゃあ、此処で永遠とはお別れ」


そう言って意地悪そうに笑った未来さんに手を引かれ

前後を笙子さんと遥華さんにガードされ


「待て」


永遠の声が虚しく響く玄関ホールから
奥へと続く長い廊下を引き摺られるように歩いた


笙子さんの付き人である坂下さんが襖を開けた部屋に入れば

目にも鮮やかな振袖が掛けられていた


「ワァ」


「永遠のお嫁さんになる人の為に
大姐が仕立ててくれたものなの」


懐かしむような目をした笙子さんは
袖を通す姿を見る前に去年亡くなったと話してくれた


「千色ちゃんに似合うわよ〜」


着物はやっぱり古典柄に限ると譲らなかったお婆様
まるでこの家からお嫁に出すような勢いに


「嫁に貰うんでしょ?」


呆れたように肩を竦めて未来さんと遥華さんが笑った


「あ〜ら、娘が一人増えるんだもん
着せ替えは楽しいじゃな〜い?」


笙子さんはぺろっと舌を出して笑った


・・・着せ替え・・・ですか


頬が引き吊りそうになるのを堪えながら


「さぁ、始めましょう」


大きな鏡台の椅子へと促され
腰掛ける


目の前にメイク道具が広げられた


「今日はとびきりにしようね」


ニッコリ笑ったのは未来さん

今日は私のヘアメイクを施してくれるらしく
エプロンには筆からクリップまで
沢山の小物が詰まっている模様


「よろしくお願いします」


鏡越しに笑顔を向けると


「永遠に勿体な〜い」


真っ赤な口紅の遥華さんが悶えるように身体を揺らした






「・・・・・・?」