・・・・・・ん


重い目蓋を開くと
いつか見た天井が目に入った


「起きたか」


スッと視界に入ってきた永遠の顔は近くて
驚いて身動ぎすると

永遠の腕に抱かれたままなのに気付いた


「・・・ん、ん?ずっとこのまま?」


「あぁ、だって着物だろ」


「・・・ごめん、なさい」


背中に大きく結ばれた帯があっては
ベッドに寝かせるという選択肢は無かったのだろう


「いや、大丈夫だ
千色の寝顔見られたから」


フッと笑った永遠


「えっと・・・」


頭の中は酷く混乱していて
何から話して良いのか分からない

その頭の中を見透かすように
永遠は核心を突いてきた


「なんで話さなかった
森谷の娘だってこと」


「・・・・・・。
東白で働く為に二ノ組の組長に
情報を守ってもらってるの、だから」


「それは表向きな」


図星過ぎて言葉にならない


「ガッチリホールドされた千色の情報に
訳有りだって推測した、もちろん
許婚がいることもな」


「・・・っ」


「結婚してねぇなら奪ってやる気だったんだ

最初から俺に打ち明けてくれていれば
通達より良い手を考えられたかもしれねぇ

森谷の両親とも蟠りを作らず済んだかもしれねぇ

確かに俺は千色より六つ下だ
でもそれがなんだ・・・
俺を無視して顔合わせに出る理由にはなんねぇ」


永遠の言うことは尤もで
言い返すことが出来ない


「俺は千色が好きだ、だから迷わねぇ」


ブレない永遠の想いに
閉じ込めようとしていた気持ちが溢れ出す


「私も永遠が好き

本当は諦めてたの・・・全部

だから今日来てくれて嬉しかった」


「千色」


「ん?」


「お前は俺の女だ
頭ん中で考えんなって言っただろ?
俺がお前を見つけた時点で
お前の人生“売約済み”だ、バカ」


いつか聞かされた言葉を
溶けるような笑顔で言い放った永遠は
チュッと音を立ててオデコに口付けた