「ハル、早く座れって」

「待てよ。店閉めてんだから」

扉を閉めて、閉店の準備をしている店主を修二が急かす。

「修二、そんな急かさなくても。別にこれからゆっくりできるじゃん」

俺が珍しく修二をたしなめる。

「颯多は優しいな。もう準備できて5分経ってる。客を待たせ過ぎだろ」

「客って笑」

思わず吹き出しそうになる。
俺たちは客じゃないでしょ?

「何がおかしいんだよ。ちゃんと予約してるし、代金だって払ってんだから立派なお客さまだろ」

確かに代金も払ってるし、貸切の予約もしたけど、普段から店主の都合なんてお構い無しにこんなに好き勝手利用しておいて、お客さまって言われても、ねぇ。

「ハールー、まだー!」

ほんとに珍しく、修二が苛立ってる。
そしてその原因は俺。ここは何が何でも、俺がなんとかしなきゃ、仕事してるハルに申し訳ない。

「もうすぐ来るって。修二が俺のこと考えてくれてるのはすっごく嬉しいけど、俺たちはプライベートでも、ハルにとっては仕事なんだから、大人しく待ってようよ、な、修二」

ニコッと自称「俺の彼氏」に笑顔を向けた。