「違う。和奏さんが思ってるような、優しさなんか持ってない。あんたが自慢するような有能な右腕でもない。無駄にプライド高くて、いつだってカッコつけなきゃやってられないんだ」

「そんなことないよ。倉科くんは優しいよ。だっていつもわたしを助けてくれたもの」

少し語気が強くなった。
自信を持って言ってくれてるのかもしれない。

「椎名だって認めてるし。あいつはあー見えて人を見る目は確かなのよ、誰かれ構わず、誘うようなことはしないの。だからわたしは」

そこで言葉が切れた。


多分気づいたんだ。
俺が今仕事の話してるんじゃないって。
だから、途中だけどやめた。
律儀だな、ほんとに。

「もういいよ。何も言わなくていいから」

もう、気持ちが持たない。
俺は和奏さんが話をやめたと同時に言った。

そして、早くケリをつけたくて、俺はさっきから話を聞いていて絶対に言わなきゃと思った言葉をつづけた。

手を伸ばして、彼女を抱きしめて。