え？
奥さま？って
もしかして？

俺は彼女からの予期しない告白に確かめずにいられなかった。

「奥さまって、部長の？ここに？」

和奏さんは静かに頷いた。

「原因はわからないけど、わたしたちのことばれちゃったの。はっきり言われたわ。今すぐ別れないなら、訴えるって」

う、訴える？
嘘？そんなことほんとに？

「別れても、裏切ってた分、きちんと慰謝料は請求するって」

全く想像していなかった彼女の告白だった。

今度は俺が驚きを隠せない。
きっとひどく間抜けなカオをしていたと思う。

「倉科くんの言うとおりだった。夫婦関係は子どものためもあるし、破綻してるとは言えないと思うとは聞いてたけど。奥さまはそんなこと微塵も思ってなかったみたい。勝ち誇ったように『泥棒ネコ』って言われたわ」

なんて言えばいいのか、正直わからない。

正解が導き出せなかった。