和奏さんに打ち合わせについて、最終確認を行う。

「受け答えは椎名がうまくやってくれるから、倉科くんは先方のご要望、雰囲気、人間関係をよく捉えてきてね。ご提案の資料はうちのだから、それに対する質問には、答えてあげて」

「はい、わかりました」

和奏さんが本日の打ち合わせの資料をめくりながら、説明する。

一区切りついて、顔を上げる。
俺と目が合った。

「どうしたの?もしかして、緊張してる?」

「え、あ、はい。初めてなので、少し」

「めずらしいね、倉科くんしっかりしてるし、いつも落ち着いてるから」

そこで言葉を切って、続けた。

「実を言うとわたしね、全然心配してないの。多分、これからもきっと」

ん?なんだ今の?
前半は椎名さんから聞いたけど。
言わなかったのは、俺にプレッシャーをかけないためだと思った。
でも、最後のは?

なんか引っかかる。

続けて話を聞いていると、入口の方から以前聞いたのと全く同じ、歓声とも取れる声が耳に入ってきた。