こんなとこで待ち合わせ?

少し不審に思いながら、隠れて様子を見る。

和奏さんが時計を、気にしているのが見えた。

どうやら、待ち合わせ時間は間もなくらしい。
それから、バッグから手鏡を取り出して、身だしなみチェック。

出てくるときも見てきただろうに。気になるらしい。

頭をクルクルと動かして、念入りにチェックしている。

仕事してる彼女が好きだ。
ご飯食べてる彼女も大好き。
屈託無く笑う笑顔が最高に可愛くて好き。

でも、好きな人を待つ女の顔した彼女を俺は知らなかった。

俺が見たことないカオ。
その人には当たり前なの?

やばい!
思考がどんどん勝手に膨らんでいく。

俺は平静を取り戻すように頭を振った。

落ち着いて顔を上げると、和奏さんの隣に人影が現れた。

セリフは聞こえないが、笑顔を向けている。

相手の男は俺からはまたしても後ろ姿しか見えない。

ここまできたんだから、絶対真実を手に入れて帰る!
そう思って、バレないように、慎重に、でもさりげなく、俺は男の前に回ろうとした。

でもそんな必要はなかった。

男と和奏さんは、踵を返して歩き出したのだ。

距離があるし、帽子もかぶってるし、だから俺とは気づかれないけど、ドキドキした。

俺の横を二人が素通りして行った。


目の端にスーツを着た人物が映った。


あれは・・・

あのスーツは・・・