「あっちってどっちの話?」

声の主を見上げると、和奏さんが、A定食を持って立っていた。

「あ、和奏さん、お疲れさまです」

俺が挨拶すると、

「お疲れさま、倉科くん。社内のイケメンが2ショットでランチしてるって、騒がれてるわよ」

和奏さんはにっこり笑った。

そして、俺の隣の席に座ると椎名さんに話しかける。

「ねぇ、さっきの話は何?まさか、あんたまだ倉科くん誘惑してるんじゃないでしょうね?」

椎名さんを睨む。

「どうだろうね〜?」

椎名さんがしらばっくれる。

「もう!ダメだって言ってるでしょ!」

「おまえにそんなこと決める権利ないだろ。こいつが俺と仕事したいって思うかもしれないしさ」

俺が和奏さんより椎名さんと?
あり得ないです。

「だいだい、おまえだっていつまで企画にいるかわかんないじゃん」

え?和奏さん異動希望なんですか?

と聞こうと思ったが、速攻で否定された。

「なにそれ?わたし異動なんて希望してないわよ」

椎名さんは、和奏さんの否定にはビクともせず、ゆっくり首を左右に振る。

「おまえも女なんだし、そうゆうこともあるかもしれないだろ」

そうゆうこと?とはつまり・・・

「ないないないない!突然変なこと言わないでよ!」

またしても速攻で否定される。

「そんなのわかんないじゃん。相手は考えてるかもよ」

「ないったらない!」

少し熱くなったせいか頬が赤い。

「もうほんとになに言い出すのよ、バカ椎名」

和奏さんは、文句を言いながら、食事を始める。

もしかして、椎名さんカマかけた?
たぶん俺のために。

そう思って椎名さんを見ると、満足げに微笑んでた。

ここは素直に感謝するべきだよな。
俺は和奏さんに気づかれないように小さく会釈した。