仕事のキリが悪くて、少し遅れて昼休みを取った。

食堂の前を通りかかると、メニューが目に留まった。

日替わり定食のデザートが、美味しいと女の子たちの間で密かな人気のカスタードプリンだった。

俺も一度は食べてみたいと思っていたから、今日のランチは日替わり定食にした。

ランチタイムのピークを過ぎていたせいか、席はまばらに埋まっている程度だった。

適当な席に座り、メインのあじフライを食べようと箸をつけたところで、声をかけられた。

「こちらの席いいですか?」

俺は相手の顔も見ずにこたえる。

「他にもたくさん空いてますよ」

「いいじゃん、俺はここがいいんだから」

「じゃあ聞かないでください」

「つれないな。サシ飲みした仲じゃん」

相手は全く引く気は無いのだ。

「あれは別にそうゆうつもりじゃ」

「わかってるって」

にっこり笑顔で、俺の向かいの席に腰を下ろす。
別にいいけどね。座るのはわかってたし。

「その後どう?相手見つかった?」

A定食のとんかつにソースをかけながら、聞いてくる。

「いえ、別に何も変わりませんよ。椎名さんこそ、そんな無理して気にしなくていいですよ。もうスーツの季節でもなくなりますし」

「そっか。おまえがいいなら俺はいいけど。でも、俺はおまえから行けば、ほんとに脈アリだと思うけどなあ。応援してるからほんとに何か出来ることあったら言ってよ」

「ありがとうございます。気持ちだけいただきます」

あれから椎名さんは社内で顔を合わすと話しかけてくる。

俺が自分の気持ちを自分でバラしたようなもんだし、仕方ないけど。
半分興味本位で面白がってるんだろう。

100パーセント真剣よりもそれくらいがちょうどいいけど。

「なぁ、じゃあさ、あっちの件は考えてる?」

「え?それは・・・まだ・・・」

「ごめん、別に急かしてるわけじゃないんだけど。なんか楽しみでさ」

「はい・・・」

俺が返事をしていると、上から声が割り込んできた。