17時15分前、ギリギリで完成した資料を俺は和奏さんに手渡した。

「これで最後です。確認お願いします」

少しして、

「倉科くん、ほんとにありがとう!
今度お礼するわね」

「そんなのいいですよ。俺は俺の仕事をしただけです。それより、部数とか間違いないですか?落丁とか大丈夫ですか?」

「大丈夫!!確認しました」

俺がしつこく確認すると和奏さんは何もおかしくないのに少し笑った。

「何がおかしいんですか」

「ううん、おかしいんじゃなくて・・・」

「今笑ってましたよね」

「う、うん、そうなんだけど」

まだ笑っている。

「どうせ、『倉科くんて小姑みたい』とか思ってるんでしょ」

嫌味っぽく言えば、すぐさま顔の前で手を振って

「ち、違うよっ!持つべきものは頼りになる右腕だなあって!そう思ってたら、嬉しくなっちゃったのよ」

「よく言いますね。頼ろうとしなかったくせに」

「そ、それは」

今度は、バツ悪そうに少し赤くなって、俯いてた。

可愛すぎるよ、和奏さん!
カオに出さずに、俺はココロの中で叫んだ。

こんな風に軽口をたたける時間は俺の至福の時間の一つだ。

そんな幸せに浸っていると、入口のほうが騒がしくなった。