「ごめんなさい」

和奏さんの何度目かのごめんなさいが聞こえた。

「なんで謝るんですか?」

もう恥ずかしいとかどうでもよくなって、俺は和奏さんを見つめた。

「だって、わたしがうだうだしてたせいで倉科くんを・・・」

この状況でその台詞言う?
どこまで天然なんだよ。

「別に怒ってません。初めてでちょっとカッコ悪くて、びっくりしてるだけです」

「びっくり?」

「初めてなんで。ほんとに嬉しいと涙って出るんですね」

俺は嬉しさのかけらも感じられないくらいぶっきらぼうに答えた。
彼女の細い指を退けて、涙を拭った。

目の前が暗くなる。
光を遮って、俺の顔は影に覆われた。

その瞬間、俺の唇に和奏さんのそれが触れた。