「和奏さんが好きです」

和奏さんの瞳が一瞬揺れた気がした。

目を合わせたまま、無言の時間が流れる。


数秒後、彼女の瞳がゆっくりと潤んでいく。

「和奏さん?なんで涙・・・」

俺が手を差し出そうとすると、ゆっくりと制された。

静かに目を閉じると、一粒大粒の涙がこぼれた。

「ごめんなさい。大丈夫。ちょっとコントロールきかないみたい」

俺は立ち上がって、和奏さんが座っている方へ歩いて行った。

「倉科くん?」

和奏さんが、近づいて行く俺を見上げる。

俺は彼女の隣にゆっくりと腰を下ろした。

「倉科くん?どうしたの?」

和奏さんは俺の行動が読めないらしく、座ったまま、後ずさる。

「そんなびっくりしないでください」

俺は和奏さんの方を向いた。

目が合った瞬間、数回まばたいた。

「もしかして、まだ緊張してます?」

俺は緊張してますよ。

心の中で付け足した。

和奏さんがゆっくりと首を縦に振る。

「今までどんな距離で話してたかもわからなくなっちゃった」

和奏さんはそのまま、下を向いて固まってしまった。