「倉科くんが好き」

え?今のは空耳じゃないかと、疑ったとき、
もう一度聞こえてきた。

「倉科くんが好きです」

確かに俺の耳に届いたのは、俺の知らない、彼女の照れた小さな可愛い声だった。

「和奏さん?」

それでも俺は、にわかには、信じられなくて。
疑問形で名前を呼んだ。

「こんなずるくて弱くて、おまけに素直じゃなくて可愛くなくて、面倒くさいアラサー女だけど、まだわたしのこと好きですか?」

まるで現実味を帯びない彼女からの告白だった。

でも、俺の答えは1つしかない。

選択肢はないんだ。だから、