和奏さんが真摯な瞳で俺を見る。
まっすぐ、射抜くように。

俺は思わず、視線を外した。


「返事遅くなってごめんなさい!」

和奏さんは、勢いよく頭を下げて俺に謝った。

「謝らないでください。待たされたなんて思ってないですから」

手で制しながらそこまで言って、俺は顔を外に向けた。

「ほんとに答えてもらえるなんて思ってなかったから、それだけでもう」

俺はそっぽを向いていたから、この言葉を聞いたときの彼女の顔はわからない。

「そうだよね。あんなこと言われたら。信じられないよね、ほんとにあのときはごめんなさい」

俺が顔を向けないから、怒ってると思ったのか、続いた彼女の言葉はひどく自分を責めているような口ぶりだった。

心の中で思う。

顔を見られないのは、今、どんなカオをすればいいか、俺がわからないだけなのに。

俺が黙っていると和奏さんが話し出した。

俺は黙って聞いている。

それはまるで独白のようだった。