俺を見つけて、片手を上げて小走りに走ってきた。

「倉科くん!ほんとにごめんなさい。こんな時間に」

俺の前で和奏さんは手を合わせて謝った。

「いいですよ、そんなの。それよりやっぱり何かあったんじゃないですか?」

俺が心配そうなカオをしていたせいか、和奏さんは慌てて否定した。


「心配かけてごめんね。ほんとに仕事のことじゃないの。それは大丈夫だから、安心して」

俺の心配を取り去るように、和奏さんが言葉を紡ぐ。


「じゃあ、なんだっていうんですか?!和奏さんが仕事以外で、しかもこんな時間に俺に用があるわけないじゃないですか!」

俺は我慢できなくて、素直に気持ちのままを言ってしまった。

和奏さんは、申し訳なさそうに俺を見ていた。

「す、すみません。あの・・・」

言いかけたところを和奏さんに遮られた。

「そうだね。わたしが倉科くんに連絡することなんて、仕事以外ないものね」

そう言って俯いてしまった。