「え?これから?ですか」

明日も仕事だし。
もう、どこか行く時間じゃない。

俺が少し驚いていると和奏さんの少し落ち込んだ声が聞こえてきた。

「やっぱり迷惑だね。ごめんね」

「いえ、俺は構いません。和奏さん、今どこですか?」

「え?会社の最寄駅だけど」

会社?
仕事じゃないのに、こんな時間まで会社に?
それってもしかしなくても。

あの人と会ってたってこと、だよな。

今度は俺の気分が落ち込んできた。

「あの、やっぱり、今夜は時間も遅いですし」

俺は小さな声で断ろうとした。

「え?何?よく聞こえない。ごめんなさい。電車来ちゃったから切るね」

プツっと電話が切れた。