俺は呼ばれた名前で我にかえった。

「椎名さん」

「どした?ぼーっとして」

目の前には俺を心配そうに覗き込む顔があった。

「え?あ、ちょっと疲れちゃって、すみません」

俺は軽く頭を下げた。

「別に謝らなくていいけど。宮原は?」

椎名さんは和奏さんに用があって来たのか。

そりゃそうか。
考えればすぐにわかることだ。

「さあ?俺には」

「バッグあるな。まだ社内にいるってことか」

椎名さんは和奏さんの荷物を確認していた。

「あ、部長のところかも・・・」

俺が思いついたことをポツリというと

「え?こんな時間に?」

椎名さんは怪訝なカオで、時計を確認した。

「時間なんて関係ないですよ」

俺は二人の関係を思い出して言った。

だけだったのだが、勘のいい椎名さんはすぐに反応した。

振り返って、ガッと俺の肩を掴んだ。

「もしかして、俺が余計なこと言ったせいで何かあったのか?」

え?余計?いや、違う

いえ、違います。
と言おうとした俺の目には、

よく知ってる心配顔にそっくりな顔が飛び込んできた。