昨日人生最大のショックを受け、カラダが自由に動かせないほど壊れた俺だったが、俺を最もよく理解する最愛の幼なじみに救われた。

翌日だってのに、嘘みたいに普通に会話も仕事もできている。

持つべきものはよくできた幼なじみだな。と二人に感謝した。

少し離れた席にいつもどおり座る和奏さんと目が合った。

俺はいつもどおり笑顔になる。
和奏さんがいつものように振る舞う以上、俺が変な態度に出ちゃだめだ。

修二が言ったとおり、まずは情報を整理し、真実に繋がる情報を集めるんだ。

俺が行動を起こすのは、それからでも遅くない。
冷静に、いつも通りを心がけて、午前中の仕事を終わらせた。

昼休み、朝買ってきたコンビニのサンドイッチとおにぎりをデスクで食べながら、情報を整理する。

俺が知ってることは、

思い出したくない昨日の光景を目をつぶりながら思い出し、
見えるものを紙に書き出してみた。

相手の身長、体型、髪型、髪色、スーツ

後ろ姿だからこんなもんしかない。

そして俺が知りたい真実は、

あれは誰だったのか?そして和奏さんとの関係は?

社内恋愛禁止じゃないし、就業時間も過ぎてたし、いや、場所が悪いか。

でも、明確になにか違反してるとはいえないよな。

そんなことを考えていると、背後に気配を感じた。
机の上のメモを隠し、振り返った。

声をかけられる前に振り返ったからだろうか、和奏さんが、少し驚いて立っていた。

「和奏さん?」

「あ、ごめんなさい、お休み時間中に」

「いえ、どうかしたんですか?」

休み時間中に話しかけてくるなんて、滅多にないことだ。

「昨日、会議室片付けに来てくれたのに、ごめんね」

申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえ、謝らないでください。俺こそ、片付けなかったし、すみません」

「あ、ううん、それはいいの。もとからわたしが片付けようと思ってたから」

和奏さんはそこで言葉を切って、俯いた。

「別に言いふらすとか、そんなこと考えてません」

俺がそうゆうと、俯いていた顔を上げた。
驚きにわずかに瞳が揺れた。

「恋愛は自由ですから。まぁ、場所は考えた方がいいとは思いますけど」

彼女の顔が赤くなる。
きっと俺と目が合ったことを思い出して、恥ずかしくなったのだろう。

これ以上見ていたくなくて、俺はパソコン画面に向いた。

「すみませんでした。ありがとう」

か細く小さな声が後ろから聞こえた。