「ほんとに頑固ですね。知ってましたけど」

「なっ!頑固とかそうゆう問題じゃないでしょ!」

少し怒る和奏さん。

「わかりました。じゃあ、素直じゃないですね」

「!」

もしかして、琴線に触れたか?
和奏さんの表情はさらに険しくなっていく。

「ま、それはお互いさまですけど」

俺の言葉に和奏さんの険しさが影を潜めた。

「え?」

「俺、そんな眩しいようなまっさらな人間じゃないですよ。さっきのは例えじゃなくてほんとに、捨てた過去くらいあります」

今度は信じられないと顔に書いてある。

「倉科くんに?」

「はい」

俺は和奏さんを見つめたまま頷いた。

「正直に言います。待つって言ったけど、実は結構限界です。振るなら振ってください。そしたら改めて攻められます」

俺の言ってることが理解できなかったらしく、和奏さんの頭には「?」が、並んでいるようだ。

「今、和奏さんに振られたら、俺は和奏さんに振り向いてもらえるような男に変わらなきゃって、いろんなこと考えて努力始められるってことです。でも答えを保留にされちゃうと、変わらない方がいいのか、変わった方が可能性あるかわからないでしょ」

彼女の表情は変わらない。
俺は続けた。

「あ、先に言っておきますけど、諦めるってのないですからね」

俺は付け加えた。