俺の質問は予想外だったのだろう。
和奏さんは反射的に顔を上げた。
ひどく驚いているようだ。

「それであなたが俺を見てくれるなら、俺は不倫くらい簡単にできますよ」

さらに目が見開く。
つぶらな瞳が零れそうだ

「傷つくってわかってても、選択肢は出せない。俺は椎名さんと同じです」

彼女の目は見開かれたままだ。

「どうして?そんな決めつけなくても、周りを見れば、もっと。この先だって」

「そんなの要りません。言ったでしょ」

俺は言葉を切って、和奏さんと視線を合わせた。
俺の瞳には、彼女の顔が映っているはずだ。

「俺の目に女として映るのはあんただけだって」

目が合った瞬間逸らされると思ったけど、
和奏さんが目を逸らさずに俺を見てくれている。

「やっと目が合いました」

嬉しくて、頬が緩む。
やっと顔を見てくれた。

「わたしは倉科くんみたいに自信持ってそんなこと言えない」

「自信なんてありません。あるとしたらそれは、フラれても受け入れなかったらチャンスあるかもって思う、諦めの悪さくらいです」

嘘じゃない。
そんなに物分かりよくなんてできない。
諦められたら、きっとあのときに諦めてる。