言い切っておいてなんだけど、この後のことなんて全く考えてなかった。

俺が固まってると、椎名さんが俺の肩を叩いて、耳打ちした。

「ここから先はおまえが決めろ。結構頑固だからな、頑張れよ」

椎名さんは俺に向かって前半は真剣に、後半は少し楽しそうに。
俺にエールを送って、その場から立ち去った。

二人きりになった。

シーンと静まり返ってる。

和奏さんは下を向いたままだ。

「あの、そのなんていうか、俺が相手じゃそんなに不安ですか?」

和奏さんがビクリと反応した。気がした。

「違うの。これはわたしの問題で、倉科くんは関係ない」

これは想定内の返答だ。
きっと和奏さんはこんなことを言うと思っていた。

「じゃあ、質問を変えます。俺にあなたと同じような過去があるって言ったら俺を直視できますか?」

「え?」