「だ、だめだよ。そんなの」

和奏さんは少し焦っているようだが、椎名さんは、至って落ち着いて答える。


「なんで?あいつがおまえの部下だから?それとも、年下は論外とか?」

完全に自分のことだと悟った。

そっと覗いて様子を伺うと、和奏さんの頭がゆっくりと振られた。

「他になんかあるのか?引っかかる要素?」

椎名さんが少し考え込んでいると、今続いている話題を吹っ切るように和奏さんが明るく話し出した。

「知ってる?倉科くんて、うちの部ですごくモテるのよ。本人はあまり意に介さないけど」

「知ってる。てかうちの部にもファンいるよ」

「営業部に?そ、そうなんだ」

少し動揺してる?

「別に驚くことじゃないだろ。あの容姿とポジションなら。将来有望株、狙われて当然」

「うん、そうだね」

「そうそう、企画部にいるだけなんて絶対もったいないんだよ」

「そうね」

椎名さん!ちょっと何勝手なこと言ってんの?

和奏さんもこの前みたいにはっきりイヤだって言ってよ!!

俺は心の中で激しくツッこんだ。

そこで二人の会話が途切れた。