「それってもう、好きってことじゃねえの?」

この声は、椎名さん?

昼休み、廊下を歩いていると、階段の踊り場あたりから、椎名さんの声が聞こえてきた。

誰かとしゃべっているようだが、相手の声は聞こえない。

「おまえね、自分でどうにもできないってことが証拠だろ」

なんの話だろ?
思わず聞き耳を立ててしまった。

「だって眩しいんだもん」



その声は椎名さんのものと比べると小さく細かったが、確かに聞こえた。

その声の主は間違いなく、和奏さんだ。

俺は死角に隠れて、耳をダンボにして立ち聞きした。

「眩しいって」

椎名さんが少し疑問の色を乗せて呟くと、すぐに答えが返ってきた。

「あんなまっすぐな瞳で見つめられたことない。

・・・直視できないよ」

椎名さんの返答はない。

「気を抜いたら、吸い込まれそうなの」

「いいじゃん。吸い込まれれば。あいつだってそのつもりだろ」

和奏さんと椎名さん二人の共通の知人、代名詞で通じるような人間、かなり親しい人物だ。
しかも和奏さんが好きな人・・・?