思わず地声を上げてしまうとリディアンちゃんは笑った。

「大丈夫よ。言ったでしょ、今は私しかいないって」

 彼女は私が驚いた理由を勘違いしたようで、そのまま笑顔で続けた。

「兄貴は漁師でね、まだ当分帰ってこないわ。だから安心して使って。ベッドはひとつしかないけど、兄弟なんだからいいわよね」
「え、えっと……」

(全っ然よくないです!)

 私は内心大慌てでセリーンの方を見る。だが。

「わかった」
「!」

 ラグが平然と返事をしてびっくりしてそちらを振り返る。でも彼はリディアンちゃんに真剣な瞳を向けていた。

「それより、この町のことを訊きたいんだが」
「さっき言ってたでしょ。なーんにもない小さな港町よ」
「この辺りに海賊のアジトがあると聞いたことはないか?」