漸くその家の前にたどり着いたときには完全に息が上がってしまっていた。

「毎日これ、上り下り大変だね」

 私が言うと彼女はにっこりと笑った。

「いつものことだから、もう慣れっこ」

 そんな彼女の家は確かに他の家に比べると大きかった。

(それにしても、よくこんな場所に家を建てようと思ったなぁ)

 岩壁に貼り付いたように建てられたその二階建ての家を見上げて思わずため息が漏れる。
 ふと背後を振り返ると海と街の全貌が見渡せた。きっと朝見たら絶景なのだろうけれど、今はそのほとんどが闇に浸かっていた。
 海賊船らしき灯りも見当たらない。

「どうぞ、入って」

 その声に向き直るとリディアンちゃんが家のドアを開けていて、私はセリーン達に続いてその中へと入った。