(あんなところにも家がある)
潮騒が響く静かな石畳を歩きながら右に聳える岩山を見上げると中腹の辺りまで点々と灯りが続いていて驚く。
あそこまで登るのは大変そうだなぁと考えていると、私の前を歩くセリーンが呟いた。
「ギルドがあればいいのだが」
「ギルド?」
訊くと彼女はこちらを振り向いた。
「私たちが初めて会ったセデの店を覚えているか? あれがギルドだ」
「あぁ!」
ぱっと頭に浮かんだのは強面の主人と筋肉隆々の男たち。
まだこのレヴールに来て間もなかった頃ビクビクしながらラグの後ろにくっついて入ったことを思い出す。
あの店で私たちはセリーンと出会ったのだ。
「ふふ、あの後お前に出逢えたのだったな」
「あそこでお前を雇ったことは今でも心底後悔してる」
セリーンの熱い眼差しに私の横を歩く小さなラグが低く毒づいた。
それでも彼女は幸せそうに微笑み、私に視線を戻した。



