その後は幸い他の海賊に会うことなく、案内役の男はもうひとつ上の階層の扉の前で足を止めた。おそらくは一番船尾よりの部屋だ。

「ここが頭の」

 言い終える前にラグの拳が腹に入り男はその場に崩れ落ちた。
 そしてラグは再び長い脚で目の前の扉を蹴破ろうとした。が、

「助けに来てくれたのか!?」

そんな歓声と共に向こう側から扉が開いてびっくりする。
 現われたのは目を輝かせたセリーンで、

「って、なんだ貴様の方か……」

しかしラグの姿を見た途端その目の輝きはスっと失われた。

「はぁ~~」

 ラグが眉間を押さえながらそれでも安堵したような長い溜息を吐くのを聞いて私もほっとする。
 セリーンは先ほどと同じ格好で、しかも奪われていた愛剣もすでにその背中に戻っていた。

「あの人は?」

 その場から部屋の中を覗くがあの海賊の姿がない。