「頭の部屋ってどこなんだろう」

 昼間恐々降りた梯子のような簡単な造りの階段を今度はしっかりと手を使って上りながら小声で訊く。

「訊くしかねぇだろ」
「訊くって」

 ラグに続いて上の階層に出ようとしてすぐ、話し声と足音が聞こえてきて慌てて口を噤む。

「音なんてしたか?」
「だから念のためにな」

 きっと先ほど扉を蹴破ったときの音に気付いて見に来たのだ。そう思ったときにはもう目の前にラグの姿はなかった。

「お前どこから……っ」
「てめっ――」

 そんな怒声の後に続いてドサっと何か倒れる音がして恐る恐る顔を出す。と、すぐ間近に白目を剥いた男の顔があって危うく悲鳴を上げるところだった。

「頭の部屋に案内しろ」

 ラグの低い声に視線を上げれば、彼はもうひとりの男の背後からその首元にナイフを突きつけていた。

 男は青ざめた顔でわかったと掠れた声を出した。