「おまえ、あの海賊の前では絶対に歌うんじゃねぇぞ」
「うん、わかってる」
「セイレーンだってことも」
「うん、絶対に言わない。なんか怖いし」

 と、ロープが解けたのがわかった。

「ありがとう!」

 やっと自由になった両手を目の前でぎゅっと握る。――でも。

「どうやって出ようか」

 目の前には鍵のかかった扉がある。術を使ったらまたラグは小さくなってしまうし、外には見張りもいるはずだ。
 ふいにこの世界に来てすぐランフォルセのお城に捕まったときのことを思い出した。
 あのときは確か丁度扉を開けて入ってきた兵士をブゥが倒してくれたお蔭で出られたけれど、今向こうから開くのを待っている時間はない。
 お城の鉄の扉とは違いここは木製のようだけれど……。