そしてグリスノートの方へ向かいながらラグへも声を掛けた。

「カノンを頼むぞ」
「またそれかよ!」

 セリーンはふふと微笑み、そしてそのままグリスノートと共に部屋を出て行ってしまった。
 再び外から鍵が閉まる音がして、私はラグに叫ぶ。

「どうしよう!?」
「どうしようもなにも、そもそもあいつが海賊のアジトに行きたいっていうからこっちも大人しくしてたんだ!」
「でもこのままじゃセリーンが! あ~~、なんでここにアルさんいないんだろう!」

 彼がいたら、こんなこと絶対に許すはずがないのに。あんな海賊きっと一瞬で倒してくれるのに……!

「や、アルは船じゃ使い物にならねぇ」
「そんなことっ」
「だが、確かにあいつに何かあったら俺がアルに殴られる。や、殴られるどこじゃねぇ。くそ、ちょっと待ってろ。もうそろそろ戻るはずなんだ!」

 ラグもかなり焦っているみたいだ。

「ほんと!? 戻ったらすぐに助けに行かなきゃ!」
「あぁ。――そうだ、ブゥにも……ん? ブゥ?」

 ラグがふと気付いたように自分の頭を見上げた。

「え、ブゥ? 頭にはいないよ?」

 つい先ほどまでラグの頭に見えていたその白い姿がない。
 ふたりして部屋の中を見回すがやはりどこにもその姿はなくて。

「まさか、」
「まさかあいつ、ついて行ったのか!?」