ぞわっと鳥肌が立つ。
 上手く話が逸れたと思っていたけれどそんなことなかったみたいだ。

 ふるふると首を横に振っていると、前にいるラグが吐き捨てるように言った。

「ゲスが。行かせねぇって言ってるだろうが」
「お、このガキ言うねぇ」

 グリスノートは笑いながらすらりと剣を抜き、ラグの眼前にその切っ先を突きつけた。

「ラグ!」
「てめぇ、立場わかってんのか? ガキだからって俺は容赦しねぇぜ」

 口元は笑っていてもその目は本気で。

「私では駄目か」

 でもそのときすぐ隣から聞こえてきた声に耳を疑う。

「セリーン……?」
「!?」

 ラグも驚いた様子でこちらを振り返った。
 彼女は挑戦的な笑みを浮かべグリスノートを見上げていた。

「こうして船に乗せてくれた、それなりの礼はさせてもらうが?」
「……あんたが?」
「私は好みではないか?」

 グリスノートはそんなセリーンを舐めるように見てから、ふんと笑い剣を下ろした。

「まぁ、あんたがどうしてもってんなら?」
「よし、決まりだな」
「セリーン!」

 ――手が自由だったら、その腕を掴んで絶対に離さないのに……!

 セリーンは立ち上がりざま小声で言った。

「私なら大丈夫だ。怖い思いをさせてすまなかった」