「なんだ、セイレーンには興味があるくせに銀のセイレーンは駄目なのか」

 セリーンの問いにグリスノートは再び目を剥いた。

「当ったり前だろ!? 銀のセイレーンが現れたお蔭でセイレーンも、そしてコロコロドリたちも大勢犠牲になったんだ。なぁグレイス、可哀ぇ想になぁ」

 そうしてまたグレイスに頬ずりをするグリスノートを見ながら思わず声が漏れていた。

「犠牲に?」

 視線だけをこちらによこし、彼は続けた。

「あぁ。口に出すのも辛ぇが、昔、歌を忌み嫌った奴らによってたくさんのコロコロドリが殺されたんだ」
「――っ」

 セイレーンだけでなく、こんな小さな生き物までが銀のセイレーンの言い伝えの犠牲になっていたなんて。
 私がショックを受けていると、グリスノートはグレイスを慈しむように見つめながらもう一度繰り返した。

「だから、噂通り銀のセイレーンがまた現れたってんなら、この手で、コロコロドリたちの無念を晴らしてやりてぇのよ」

 しん、と一瞬その場が静寂に包まれて、

「――と、喋りすぎたな。ま、セイレーンの情報は有難くもらっとくぜ。んじゃ、そろそろ行くか」
「え」

視線が合って、彼がにたりと口端を上げた。

「セイレーンの代わりと言っちゃあなんだが、精々いい声で歌ってくれよ?」