「だ、だから、昨日の夜とついさっき」
「そうじゃねぇ。人の歌う声をだ」

 彼が何を言いたいのかさっぱりわからない。

「だったらなんだってんだ」

 ラグが低く問い返すと、グリスノートはすぐさまそちらを見下ろした。

「どこで聞いた」
「だから今この場でだが?」

 次いでセリーンが答えると、グリスノートは堪りかねたように叫んだ。

「あぁ~~くっそ、じれってぇな! グレイス!」

 そして肩に留まっている白い小鳥の方に顔を向けた。

「おまえの美しい歌声を聴かせてくれ」

 歌声!?

 グレイスと呼ばれた白い小鳥はバサリと翼を広げるとその小さな嘴を大きく開いた。

 ――!

 辺りに響き渡ったその甲高い鳴き声は、間違いなく昨夜、そしてつい先程耳にした歌声だった。