何やら悪戯っぽい目をして彼女は続けた。

「この辺りの海にな、幽霊船が出るらしい」
「ゆっ、幽霊船!?」

 思わず大きな声が出てしまっていた。

 だって海賊船ってだけでも怖いのに、更に幽霊船!?

 と、丁度そんなときだった。

「なんだ、元気じゃねぇか」

 いきなり後ろから掛かった低い声にびくっと肩が飛び上がってしまった。
 急いで振り返るとそこには相変わらず不機嫌そうな彼がいて。

「ラグ! はぁ~、びっくりしたぁ。おはよう」
「治ったのか?」
「あ、うん。大分慣れてきたみたい。ありがとう」

 胃のあたりを摩りながら私は笑顔で答える。
 するとラグは呆れたように短く息を吐いた。

「ったく、うるせぇのがいないと思ったら、お前もとはな」
「え?」
「なんだ、あのメガネ船酔いするのか?」

 あぁ、アルさんのことかと私は別れてきた彼のことを頭に思い浮かべた。