「かい、ぞく?」
「ん? あぁ、カノンは知らなかったか。この辺りの海には昔から海賊が出るんだ」

 事も無げに言ったセリーンに私はさーっと蒼くなって更に訊く。

「海賊って、あの海賊? 船で襲ってきて金品奪ってく?」
「あぁ、以前に何度か野盗に襲われたことがあるだろう。あれの海版だ」

 なぜだろう。確かに同じ賊ではあるけれど海賊と聞くと何やらとてつもなく恐ろしいものに感じられた。陸と違って逃げ場がないからだろうか。

「え、大丈夫なの!?」
「あぁ。この大きさの船ならば普通1stの傭兵も何人か雇っているはずだ。だから海賊もおいそれとは襲ってこない」
「そ、そうなんだ……?」

 いつの間にか力の入っていた肩を落として、それでもやっぱり不安でつい海をぐるりと見渡してしまう。

 と、セリーンがふっと笑った気がした。

「それよりも、面白い話を聞いたぞ」
「面白い話?」